GRAN天空に乗る前に知っておきたい完全ガイド|料金・予約方法・時刻表・車内・停車駅・食事を実乗目線で詳しく紹介
南海高野線に、新しい観光列車が走りはじめた。名は「GRAN 天空」。読みは「グランてんくう」である。
南海なんば駅の0番のりばから、高野山の玄関口である極楽橋駅までを結ぶ。終点の極楽橋から先、高野山駅へはケーブルカーに乗り継ぐ。昔から高野山への道は、ただ移動するためだけのものではなかった。平地を離れ、橋本を過ぎ、九度山を越え、線路が山へ分け入るにつれて、旅人の気分も少しずつ日常から剥がれていく。
GRAN天空は、その変化を列車そのものの中で味わわせる列車である。単なる特急ではない。食事があり、酒があり、ラウンジがあり、山の線路特有の揺れがあり、そして高野山へ近づいているという感覚がある。
この記事では、GRAN天空に乗る前に知っておきたい「料金」「予約方法」「時刻表」「車内」「車両・号車」「停車駅」「トイレ」「食事」を、公式情報と実際にGRAN天空2号に乗車した体験をもとに、できるだけ詳しくまとめる。
特に、時刻表、停車駅、車両・号車、食事については、旅行計画に直結するので丁寧に書いておきたい。
GRAN天空とは|なんばから極楽橋へ向かう高野山アクセスの観光列車
GRAN天空は、南海なんば駅と極楽橋駅を結ぶ観光列車である。所要時間は列車によりおよそ1時間30分から1時間40分ほど。極楽橋駅から高野山駅までは南海高野山ケーブルに乗り換える。
運行区間は、なんば駅から極楽橋駅まで。停車駅は、下り列車の場合、なんば、新今宮、天下茶屋、堺東、金剛、河内長野、林間田園都市、橋本、九度山、極楽橋である。上り列車はこの逆順となる。
運行本数は1日2往復。下りがGRAN天空1号とGRAN天空3号、上りがGRAN天空2号とGRAN天空4号である。
列車番号でいえば、次のように覚えるとわかりやすい。
GRAN天空1号:朝、なんば発・極楽橋行き
GRAN天空2号:午前、極楽橋発・なんば行き
GRAN天空3号:昼、なんば発・極楽橋行き
GRAN天空4号:午後、極楽橋発・なんば行き
高野山へ向かうなら1号または3号、帰りに乗るなら2号または4号である。私はGRAN天空2号に乗った。極楽橋を発って山を下り、難波へ戻る列車である。
山上からの帰途は、しばしば旅の余韻を整理する時間になる。往路の昂揚とは違い、復路には少しだけ沈黙がある。GRAN天空2号は、その沈黙に料理と酒を添えてくれる列車であった。
GRAN天空の停車駅|高野山へ向かう主要駅に停まる
GRAN天空の停車駅は、旅行計画を立てるうえで重要である。なんば始発ではあるが、途中の主要駅からも乗車できる。
下り、極楽橋方面の停車駅は以下の通り。
停車順駅名備考1なんば始発。専用感のある0番のりばから発車2新今宮JR・大阪メトロとの乗り換えに便利3天下茶屋大阪メトロ堺筋線方面から便利4堺東堺市中心部からの乗車に便利5金剛南大阪方面の主要駅6河内長野高野線の山岳区間に入る前の要所7林間田園都市橋本市内の住宅地に近い駅8橋本和歌山県側の主要駅9九度山真田ゆかりの地。高野山麓の観光地10極楽橋高野山ケーブルカー接続駅
上り、なんば方面はこの逆で、極楽橋、九度山、橋本、林間田園都市、河内長野、金剛、堺東、天下茶屋、新今宮、なんばの順に停まる。
特に注目したいのは、九度山に停まることだ。高野山へ一気に向かうだけなら、九度山は途中駅のひとつに見える。しかし、真田ゆかりの地であり、古くから高野山麓の物語を抱えた町である。GRAN天空の旅では、九度山の名が車内で聞こえた瞬間、列車がいよいよ山の旅へ入ってきたことを感じる。
また、橋本から極楽橋にかけては高野線らしい山岳区間である。カーブが増え、勾配も変わり、列車の揺れも都市部とは違ってくる。ここはGRAN天空の旅の核心部であり、食事や飲み物を楽しむ人は、飲み物の置き場所に注意したい。実際に乗ってみると、山岳区間では思った以上に揺れる。とくにビール、日本酒、ワインなどを楽しむときは、グラスをテーブルに置きっぱなしにしないほうがよい。
GRAN天空の時刻表|各駅の発着時刻を詳しく確認
GRAN天空の時刻表は、平日と土休日で一部時刻が異なる。全体としては1日2往復で、下りはなんば発の1号・3号、上りは極楽橋発の2号・4号である。
ここでは、公式発表に基づき、各駅の時刻を整理する。
下り:なんば発・極楽橋方面|GRAN天空1号・3号
平日ダイヤ
駅名GRAN天空1号GRAN天空3号なんば 発9:0012:45新今宮 発9:0212:47天下茶屋 発9:0512:50堺東 発9:1412:58金剛 発9:2613:09河内長野 発9:3113:14林間田園都市 発9:4113:24橋本 発9:4713:31九度山 発9:5813:45極楽橋 着10:3014:20
土休日ダイヤ
駅名GRAN天空1号GRAN天空3号なんば 発9:0012:45新今宮 発9:0212:47天下茶屋 発9:0512:50堺東 発9:1212:58金剛 発9:2213:09河内長野 発9:2713:14林間田園都市 発9:3913:24橋本 発9:4613:31九度山 発9:5713:42極楽橋 着10:3014:20
下り列車で高野山観光を考えるなら、朝のGRAN天空1号が使いやすい。なんばを9時に出て、極楽橋に10時30分に着く。そこからケーブルカーに乗り換えれば、午前中のうちに高野山へ入れる。奥之院、金剛峯寺、壇上伽藍をきちんと巡るなら、1号の利用がもっとも自然である。
一方、GRAN天空3号は昼出発である。午前中に大阪市内で用事を済ませてから高野山へ向かう、あるいは高野山で宿坊に泊まる前提でゆっくり上がるなら、3号もよい。昼の列車には、朝とは違った旅情がある。車窓の光が強く、山の斜面がくっきりと見える。
上り:極楽橋発・なんば方面|GRAN天空2号・4号
平日ダイヤ
駅名GRAN天空2号GRAN天空4号極楽橋 発10:4614:58九度山 発11:1815:33橋本 発11:3015:46林間田園都市 発11:3515:51河内長野 発11:4616:01金剛 発11:5116:06堺東 発12:0016:16天下茶屋 発12:0816:23新今宮 発12:1016:25なんば 着12:1316:28
土休日ダイヤ
駅名GRAN天空2号GRAN天空4号極楽橋 発10:4714:58九度山 発11:1815:30橋本 発11:3015:43林間田園都市 発11:3515:48河内長野 発11:4615:58金剛 発11:5116:03堺東 発12:0016:13天下茶屋 発12:0816:20新今宮 発12:1016:23なんば 着12:1316:26
上り列車のうち、GRAN天空2号は午前に極楽橋を出る。高野山に前泊し、翌朝に山を下る人には使いやすい。GRAN天空4号は午後の下山列車で、日帰り観光の帰路にも向く。
私が乗ったのはGRAN天空2号である。極楽橋を出る時刻は10時台。山の朝はまだ湿り気を残していて、列車が動き出すと、窓の外を杉や斜面が流れていく。ほどなく料理が供される。旅の朝食というには豊かで、昼食というには少し早い。だがこの中途半端さが、かえって列車の食事らしかった。駅弁とは違い、レストランとも違う。走る山道のなかで、土地の味を少しずつ拾っていく感じである。
GRAN天空の車両・号車|1号車、2号車、3号車、4号車の違い
GRAN天空は号車ごとに役割がはっきり分かれている。予約前に、どの号車を選ぶかを理解しておきたい。
1号車:リラックスシート
1号車はリラックスシートで、座席数は24席である。リクライニング座席を備え、一般的な特急座席に近い感覚で利用できる。
GRAN天空に乗ってみたいが、食事付きプランまでは不要という人には、1号車が候補になる。1人でも利用しやすく、車内で軽食や飲み物を買うこともできる。1号車には車椅子スペースもあり、男女共用のバリアフリートイレと男性専用の一般トイレが設置されている。
2号車:ワイドビューシート
2号車はワイドビューシートで、座席数は30席である。名前の通り、車窓を楽しむことを意識した座席配置になっている。
高野線の魅力は、橋本を過ぎてからの山岳区間にある。木々が近くなり、線路が曲がり、駅間の空気が変わる。そうした景色を眺めるなら、2号車のワイドビューシートは魅力的である。
2号車は、食事付きの4号車ほど高額ではなく、それでいて観光列車らしい眺望を味わえる。高野山へ行く移動そのものを楽しみたい人に向く。
3号車:ロビーラウンジ
3号車は座席車ではなく、ロビーラウンジである。サービスカウンターがあり、軽食、飲み物、お土産などを販売している。1号車から4号車まで、すべての乗客が利用できる。
この3号車があることで、GRAN天空はただの指定席特急ではなくなる。途中で席を立ち、飲み物を選び、オリジナル商品を見る。その小さな移動が、列車旅らしさを増してくれる。
車内販売では、軽食、お菓子、おつまみ、ソフトドリンク、クラフトビール、日本酒、梅酒、ワインなどが用意されている。オリジナル金平糖、野菜チップス、ハート最中、果物ジャムなどもあり、今後さらにGRAN天空グッズが充実していくことを期待したい。
4号車:グランシート・グランシートプラス
4号車は、GRAN天空の中心といってよい。座席数は16席。グランシートとグランシートプラスが配置され、ソファ席で食事や飲み物を楽しむ。
4号車は1シート4人掛けで、2名以上から利用できる。グランシートは3シート、グランシートプラスは1シート。グランシートプラスは、より特別感のあるテーブルやソファを備える。
4号車は相席にならない。これは大きい。2人なら2人だけで1シート、3人なら3人だけで1シート、4人なら1シートをそのまま使う。5人の場合は2名1シートと3名1シートというように、複数シートを購入することになる。
また、4号車は食事・飲み物の提供を前提とした空間であるため、外部からの飲食物の持ち込みは原則として避ける必要がある。4号車を選ぶなら、車内で提供される食事と飲み物を楽しむ前提で考えたい。
GRAN天空の車内|工芸、ラウンジ、ソファ、食事が一体になった空間
GRAN天空の車内は、沿線の素材や工芸を取り入れたつくりになっている。公式サイトでは、車内の家具、手すり、壁、柱、照明、握り玉にいたるまで沿線へのこだわりを散りばめたと説明されている。
4号車には、真田紐のパーテーション、大阪欄間や阿波紙を組み合わせた建具、組子細工などが使われている。九度山、高野山、大阪、和歌山という土地の名が、単なる地名としてではなく、車内の素材や意匠として現れてくる。
外観も印象的だ。車体には羽を思わせる有機的なラインが描かれ、南海の社章である羽車マークを由来とするデザインが取り入れられている。側面には高野山に咲くシャクナゲや、南海ビルを飾るアカンサスなど、沿線にゆかりの植物もあしらわれている。
鉄道車両は、ふつうは機能のためにつくられる。だが観光列車では、機能に加えて「記憶に残ること」が求められる。GRAN天空はその点で、車内に少しずつ見どころを置いている。派手な演出ではない。座ってから、手を置き、窓を見て、ふと仕切りの意匠に気づく。その程度の静かな装飾が、高野山へ向かう列車にはよく合っている。
GRAN天空のトイレ|1号車と3号車に設置
GRAN天空のトイレは、1号車と3号車にある。
1号車リラックスシートには、男女共用のバリアフリートイレと男性専用の一般トイレが設置されている。3号車ロビーラウンジには、男女共用トイレと女性専用トイレが各1基ある。
4号車のグランシート・グランシートプラスを利用する場合でも、トイレは1号車または3号車を使うことになる。食事や飲み物を楽しむ列車なので、トイレの場所は乗車後早めに確認しておくと安心である。
高野線の山岳区間はカーブが多い。席を立つときは、列車の揺れに注意したい。特に橋本から極楽橋にかけて、あるいはその逆の区間では、都市部の特急とは揺れ方が違う。通路を歩くときは手すりを使い、飲み物を持って移動するときは無理をしないほうがよい。
GRAN天空の料金|1・2号車と4号車で仕組みが違う
GRAN天空の料金は、号車によって考え方が異なる。
1号車・2号車の料金
1号車リラックスシート、2号車ワイドビューシートは、基本的に「乗車券+特別急行券」が必要である。
たとえば、なんばから高野山まで乗る場合、乗車券として運賃が必要で、さらにGRAN天空の特急料金が必要となる。公式例では、新今宮駅から高野山駅までリラックスシートを大人1名で利用する場合、運賃1,430円+特急料金1,700円=3,130円とされている。
注意したいのは、極楽橋から高野山駅まではケーブルカーである点だ。つまり「高野山まで」と考える場合、列車は極楽橋まで、そこからケーブルカーに乗り換えることになる。
また、なんば・新今宮・天下茶屋の各駅相互間の特急券は発売されない。短距離利用ではなく、高野線方面への観光利用を前提にした列車と考えたい。
車内で予約なく1・2号車の特急券を購入する場合は、空席があれば可能だが、300円の加算料金が必要となる。ただし、当日運行分については、なんば駅2階サービスセンター、極楽橋駅、高野山駅で1・2号車のみ予約受付を行っており、その場合は車内購入時の加算料金がかからない。
4号車グランシート・グランシートプラスの料金
4号車は「プラン料金」で考える。料金には、南海電鉄の各駅(一部を除く)から高野山駅間の運賃、特急料金、グランシート券、食事または飲み物などが含まれる。
4号車には大きく分けて、次の2種類のプランがある。
1つは「食事+フリードリンク付きプラン」。もう1つは「ワンドリンク付きプラン」である。
食事+フリードリンク付きプランは、列車によって内容が違う。
GRAN天空1号:モーニング
GRAN天空2号:ランチ
GRAN天空3号:ランチ
GRAN天空4号:アフタヌーンティー
料金は利用人数、大人・小児の人数、グランシートかグランシートプラスか、食事付きかワンドリンク付きかによって変わる。
目安として、4名全員が大人で利用する場合の1人あたり料金は以下の通りである。
プラングランシートグランシートプラス1号・4号 食事+フリードリンク11,230円11,980円2号・3号 ランチ+フリードリンク13,430円14,180円1〜4号 ワンドリンク付き5,510円6,260円
ランチ付きの2号・3号は、モーニングやアフタヌーンティーより高めである。食事の内容が充実しているためだろう。私が乗ったGRAN天空2号もランチ提供列車であり、価格だけ見ると少し身構えるが、実際には列車、座席、料理、飲み物、移動そのものを含めた体験として考えるべきである。
4号車は2名以上から利用できる。1人旅の場合は、1号車または2号車を選ぶことになる。大人だけでなく小児を含む場合は料金が変わるため、予約時に人数構成を正確に入力したい。
GRAN天空の予約方法|専用サイトで購入、4号車は事前購入必須
GRAN天空の予約・購入は、基本的にインターネットのGRAN天空専用サイトから行う。
駅窓口でいつでも買える一般的な特急券とは違うので、ここは注意したい。公式FAQでも、駅では原則発売しておらず、専用サイトでの購入や旅行代理店のプラン申し込みで乗車できるとされている。
1号車・2号車の予約
1号車リラックスシート、2号車ワイドビューシートの特別急行券は、乗車日を含む30日前の0時00分から、指定列車が当該駅を発車する3分前まで購入できる。
つまり、空席があれば直前購入も可能である。ただし、旅行シーズンや週末、高野山の行事がある日などは満席になる可能性があるため、早めの予約が安心である。
当日運行分については、なんば駅2階サービスセンター、極楽橋駅、高野山駅で1・2号車のみ予約受付を行う。予約受付後、特急料金は列車内で支払う。この場合、車内購入時の300円加算はかからない。
4号車の予約
4号車グランシート・グランシートプラスは、事前購入が必要である。車内での購入や駅での当日予約はできない。
購入開始は、乗車日を含む30日前の0時00分から。ただし、グランシート各種プランを2シートで利用する場合は、乗車日の40日前0時00分から発売される。
購入期限はプランによって異なる。
プラン購入期限食事+フリードリンク付きプラン乗車日の4日前23時59分までワンドリンク付きプラン乗車日の前日23時59分まで
食事付きプランは仕込みや手配があるため、直前購入ができない。GRAN天空で食事を楽しみたいなら、予定が決まり次第、早めに予約するのがよい。
支払いは、専用サイトではクレジットカード決済のみである。購入完了時にはQR乗車券が発行される。メールを削除してしまった場合や電子チケット関係の問い合わせは、リンクティビティへの問い合わせとなる。
GRAN天空の食事|4号車で味わう地元食材のコース
GRAN天空の魅力をもっとも強く感じるのは、やはり食事である。
4号車の「食事+フリードリンク付きプラン」では、地元食材を使ったメニューが提供される。監修はレストラン「Genji」の元川篤シェフ。南大阪と和歌山の食材を、和食、洋食、創作料理の境目をあまり意識させない形でまとめている。
食事は列車により異なる。
GRAN天空1号:モーニング
GRAN天空1号では、モーニングが提供される。内容は、おかもち小鉢6品、サンド2種、ポタージュなど。高野山へ向かう朝の列車にふさわしい構成である。
朝9時になんばを出る列車で、車窓を眺めながら朝食をとる。これはかなり贅沢な時間だ。一般的な駅弁の朝食よりも、少し改まった気持ちになるだろう。
GRAN天空2号・3号:ランチ
GRAN天空2号と3号では、ランチが提供される。内容は、おかもち小鉢12品、ごはん、土瓶蒸しである。
このランチがGRAN天空の食事の中心といってよい。南大阪や和歌山の地元食材を使った12種類の創作料理が、職人が仕上げた「おかもち」で供される。
メニューには、白胡麻豆腐、地元野菜、さわら、泉州蛸、有田みかん、梅、ローストビーフ、足赤海老、河内鴨、熟成鶏などが並ぶ。土地の名が料理名の中に自然に入り込んでいるのがよい。旅先の料理は、食材の説明がそのまま地図になる。
私が乗ったGRAN天空2号では、最初の冷製土瓶蒸しから期待が高まった。土瓶蒸しといえば温かいものを思い浮かべるが、冷製で出されることで、列車の食事として無理がない。器を持ち上げ、ひと口すすると、山を下る列車の時間がゆっくりになる。
料理は冷めても美味しい。これは重要である。列車の食事は、厨房から客席までの距離の問題だけでなく、走行中に食べるという条件がある。温かさだけに頼る料理は、時間が経つと印象が弱くなる。しかしGRAN天空のランチは、冷めた状態でも味が崩れにくい。小鉢それぞれに酸味、香り、食感の変化があり、少しずつ箸を進める楽しさがある。
山岳区間では揺れが大きい。だから、汁物や飲み物には注意したい。とくに地ビールや地酒を飲むときは、注いだままテーブルに置きっぱなしにしないこと。列車がカーブに入ると、グラスの中の液面が旅人より先に山を知っているかのように傾く。
GRAN天空4号:アフタヌーンティー
GRAN天空4号では、アフタヌーンティーが提供される。内容は、デザート6種とセイボリー3種。なんば方面へ戻る午後の列車に合わせた構成である。
高野山観光を終え、午後に極楽橋から列車に乗る。山を下りながら、甘いものと飲み物をゆっくり楽しむ。これは、日帰り旅の締めくくりとしてかなり魅力的である。
モンブラン、フルーツタルト、バターサンド、クッキー、梅や山椒を使ったプリンなど、土地の素材を甘味に寄せたメニューが並ぶ。高野山の静けさを歩いたあと、列車の中で少し華やかな菓子を食べる。その落差が旅の終章になる。
GRAN天空のドリンク|地ビール・地酒がおすすめ
GRAN天空では、飲み物も大きな楽しみである。
4号車の食事+フリードリンク付きプラン、ワンドリンク付きプランでは、コーヒー、紅茶、ソフトドリンク、クラフトビール、ビール、ノンアルコールドリンク、日本酒、梅酒、ワイン、ウイスキーなどから選べる。
特におすすめしたいのは、地ビールと地酒である。
クラフトビールでは「天空高野ビール」や「AGARA CRAFT ゆずエール」が用意されている。高野山へ向かう、あるいは高野山から下る列車で「天空高野」という名のビールを飲むのは、少々できすぎている。しかし旅では、そういうできすぎた名前も悪くない。
日本酒では「天野酒 吟醸」や「純米吟醸 高野山 般若湯」がある。高野山で酒といえば「般若湯」という言葉を思い出す。宗教的な土地の名を借りた酒を、山岳鉄道の列車で少しずつ飲む。これは鉄道旅としてかなり濃い。
私の実感としても、GRAN天空では地ビール、地酒を選ぶのがよい。料理が南大阪・和歌山の食材を多く使っているので、飲み物も沿線に寄せたほうが一体感が出る。もちろん飲みすぎは禁物である。山岳区間の揺れは、酔いにもグラスにも親切ではない。
GRAN天空の車内販売|軽食・お土産・オリジナル商品
3号車ロビーラウンジでは、軽食や飲み物、お土産が販売されている。
軽食では、北極星の特製チキンオムライス、会津屋の元祖ラヂオ焼き、玉林園グリーンソフトなどがある。大阪らしい品や和歌山らしい品が混じっていて、ラウンジに行くだけでも楽しい。
お菓子やおつまみでは、自由軒のカレー煎餅やカレー味柿の種、GRAN天空特別パッケージのドルチェ缶、バターサンド、オリジナル野菜チップス、オリジナル金平糖、ハート最中、果物ジャムなどが並ぶ。
ただ、実際に乗ってみると、GRAN天空グッズについてはさらに充実してほしいと感じた。観光列車に乗ると、人は何かを持ち帰りたくなる。切符、パンフレット、記念乗車証、菓子、キーホルダー、文具。どれも小さなものだが、旅の記憶は小物に宿ることがある。
公式情報では、オリジナルグッズ欄に「COMING SOON」とされている部分もある。今後、車両デザインを生かした文具、車内意匠をモチーフにした手ぬぐい、沿線素材を使った限定品などが増えれば、GRAN天空の旅はさらに深くなるだろう。
GRAN天空に乗るならどの号車がおすすめか
GRAN天空をどの号車で楽しむかは、旅の目的による。
高野山への移動を少し特別にしたいが、費用は抑えたい。そういう人には1号車リラックスシートがよい。1人でも乗りやすく、トイレや車椅子スペースもある。
車窓を重視するなら2号車ワイドビューシートがよい。高野線の山岳区間を眺めるなら、座席配置の工夫が生きる。
車内販売や軽食を楽しみたいなら、3号車ロビーラウンジへ足を運びたい。ここは座席ではなく、列車旅の小さな広場である。
食事を含めてGRAN天空を満喫したいなら、やはり4号車である。2名以上での利用が条件となるが、ソファ席で相席なし、食事と飲み物付きという体験は、他の号車とは別物である。
個人的には、初めてGRAN天空に乗るなら4号車の食事付きプランをおすすめしたい。特に2号または3号のランチプランは、料理の充実度が高い。価格は安くないが、「高野山へ行くための交通費」ではなく、「列車内で過ごす観光体験」と考えると納得しやすい。
GRAN天空2号の乗車体験|山を下る列車で味わうランチ
ここで、私が乗ったGRAN天空2号の印象を少し書いておく。
極楽橋駅は、山の駅である。ケーブルカーから乗り換えると、空気がまだ高野山の湿度を帯びている。列車はすでに旅人を待っている。外観は深い赤をまとい、正面には特別な列車らしい表情がある。
席につくと、まず車内のしつらえに目がいく。過度に豪華ではない。だが、普通の特急とは違う。工芸的な要素があり、テーブルがあり、ソファがあり、そこに料理が置かれることを前提にした余白がある。
発車すると、極楽橋の静けさが後ろへ去っていく。すぐに山岳区間らしい揺れがはじまる。これがなかなか大きい。飲み物をうかつに置くと危ない。山の線路は、乗客に対して「ここは平地ではない」と知らせてくる。
料理は冷製土瓶蒸しから始まった。これがよかった。ひと口で、車内食への期待が高まる。温かさで押すのではなく、香りと出汁で始める。列車の食事として、理にかなっている。
おかもちの小鉢は、見た目にも楽しい。小さな料理がいくつも並ぶと、食べる順番を考える。どれから箸をつけるか。それだけで時間が伸びる。さわら、蛸、梅、山椒、みかん、鴨。南大阪と和歌山の名前が、味の中で少しずつ現れる。
そして、冷めても美味しい。これは繰り返しておきたい。車内で出される料理は、熱々であることよりも、時間が経っても崩れないことが大切だ。GRAN天空のランチは、その点でよく考えられている。
飲み物は地ビールや地酒がよい。特に山を下る列車で飲む日本酒は、どこか背徳感がある。まだ昼前で、車窓には山が流れている。列車は九度山、橋本、林間田園都市と下っていく。旅は終わりに近づいているのに、食事はまだ終わらない。そのずれがよい。
なんばに近づくと、車窓は急に都市へ戻る。さきほどまでの山の線路が嘘のように、建物が増え、線路が増え、人の気配が戻ってくる。終点なんばに着くと、列車の旅は終わる。しかし、料理の余韻は少し残る。高野山から大阪へ戻ったのに、まだ山の水気が体の中にあるような気がした。
GRAN天空の注意点|予約・持ち込み・揺れ・アレルギー
GRAN天空に乗る前に、いくつか注意しておきたいことがある。
まず、4号車は事前購入が必要である。食事付きプランは乗車日の4日前23時59分まで、ワンドリンク付きプランは前日23時59分まで。食事付きで乗りたいなら、直前に思い立っても間に合わないことがある。
次に、4号車は外部からの飲食物持ち込みが原則できない。車内で提供されるメニューを楽しむ空間だからである。一方、1号車と2号車については飲食物の持ち込みが可能とされている。
食物アレルギーについては、個別対応は行っていない。アレルゲンを取り除く対応や、ハラール・ベジタリアンなどの専用メニューも用意されていない。アレルギー等で持ち込みが必要な場合は、当日アテンダントスタッフに知らせる必要がある。
また、山岳区間の揺れには注意したい。GRAN天空は観光列車であり、食事や酒を楽しめる。しかし列車はあくまで高野線を走る。橋本から極楽橋にかけては、線路が山に沿って曲がる。飲み物の置き方、トイレへ行くタイミング、席を立つときの手すりには気をつけたい。
ペットは乗車できない。ただし、盲導犬、介助犬、聴導犬などの補助犬は乗車可能である。喫煙スペースは駅構内・車内ともにない。電子タバコも使用を控える必要がある。
GRAN天空をおすすめしたい人
GRAN天空は、単に高野山へ早く行きたい人のためだけの列車ではない。
おすすめしたいのは、次のような人である。
まず、高野山旅行を出発から特別なものにしたい人。なんばから極楽橋までの時間を、ただの移動ではなく、旅の本編にしたい人には向いている。
次に、食事付き観光列車が好きな人。4号車の食事付きプランは、列車内で料理と飲み物を楽しむためのものなので、食に興味がある人ほど満足度が高い。
また、南大阪・和歌山の食材や酒に関心がある人にもよい。料理だけでなく、飲み物にも沿線らしさがある。地ビール、地酒、みかんジュース、じゃばらドリンクなど、土地の味を列車の中で試せる。
一方で、費用を抑えたい人や、1人で気軽に乗りたい人は、1号車または2号車を選ぶとよい。4号車は2名以上での利用が条件であり、食事付きプランは価格も高めである。
まとめ|GRAN天空は「高野山へ行く列車」ではなく「高野山への時間」を味わう列車
GRAN天空は、なんばと極楽橋を結ぶ観光列車である。だが、実際に乗ってみると、それだけでは足りない説明だと思う。
なんばの0番のりばを出て、堺東、金剛、河内長野を過ぎ、橋本から山へ入る。九度山を越え、極楽橋へ至る。あるいはその逆に、極楽橋から山を下り、橋本、河内長野、堺東を経て、なんばへ戻る。その1時間半ほどのあいだ、車内では料理が出て、酒が注がれ、車窓が変わる。
GRAN天空の魅力は、早さではない。豪華さだけでもない。車窓、食事、揺れ、停車駅、車内の工芸、ラウンジで買う小さな土産。それらが重なって、「高野山への時間」が少し濃くなることにある。
料金だけを見れば、4号車の食事付きプランは安くはない。だが、料理は冷めても美味しく、最初の冷製土瓶蒸しから期待が高まる。地ビールや地酒もよく合う。山岳区間では飲み物に注意が必要だが、その揺れさえも、この列車の一部だと思えばよい。
今後、GRAN天空グッズがさらに充実すれば、旅の記憶を持ち帰る楽しみも増えるだろう。
高野山へ行くなら、ただ列車に乗るのではなく、列車そのものを旅程に入れてみたい。GRAN天空は、そのための列車である。時刻表を見て、停車駅を確かめ、号車を選び、食事を決める。その準備の段階から、すでに旅は始まっている。


